新生児の聴覚検査とは
新生児の赤ちゃんに行うことができる聴覚検査は、赤ちゃんの耳の「聞こえ」の検査です。
「新生児聴覚スクリーニング」とも呼ばれます。
この検査の目的は、赤ちゃんの聴覚の異常の早期発見です。
先天性難聴を持つ赤ちゃんは、 1000 人に約 1〜 2 人とされており、他の先天性の疾患に比べても出現頻度が高いです。
生まれつきの「聞こえにくさ」は早期に見つけて、適切な支援を受けることが、赤ちゃんの健やかな言葉や心の成長につながります。
今回は、この新生児聴覚検査について、どのような検査なのか、またもし検査でひっかかることがあったらどのような流れになるのかについて紹介します。
新生児聴覚スクリーニングの検査はいつ受ける?
新生児聴覚スクリーニングは、「新生児」と名前が付いている通り、「新生児」期に受けます。
まず出生後 3日以内に産まれた病院で初回検査を行うことが多いです。
産院で検査ができない場合には、赤ちゃんの退院後に他の医療機関で受けられます。
他の医療機関で受ける場合には、生後1ヶ月内に受けましょう。
検査に「パス」 しなかった場合は、赤ちゃんが退院するまでの生後1週間以内に再検査が行われることも多いです。
【検査の費用は?】
新生児聴覚スクリーニングは、基本自費診療となります。
費用は医療機関によって異なります。出産の費用の中にあらかじめ含まれている場合もあります。
ただし、お住まいの自治体によっては、費用の一部助成がある場合があります。
自治体外の医療機関で検査を受けた場合も助成の対象になることがあるので、お住まいの自治体へ確認してみてください。
新生児聴覚スクリーニングの検査の内容
現在、新生児聴覚スクリーニングには主に自動聴性脳幹反応(ABR)と耳音響放射(OAE)の2種類の検査方法が使用されています。
どちらも赤ちゃんに痛みや負担をかけずに行われます。
どちらかの検査を行う場合や、両方を二段階で行う場合もあり、医療機関によって方法は異なります。
検査時間はおおよそ5分~10分です。
【自動聴性脳幹反応(ABR)】
自動聴性脳幹反応では、赤ちゃんが寝ている状態で、イヤホンから小さなささやき声のような音が流されます。
これにより内耳の蝸牛から聴神経、脳幹までの反応が頭皮の電極で検出され、自動的に判定されます。
聞こえの反応があったという「パス」か、要再検査という意味の「リファー」のどちらかの反応が出ます。
【耳音響放射(OAE)】
一方、耳音響放射は赤ちゃんの耳にプローブを挿入し、音に反応して内耳から発生する反響音を検査します。
ただし、耳垢や中耳に残った羊水の影響により、「リファー」の結果が出る頻度が自動聴性脳幹反応よりも高くなることがあります。
また、内耳よりも中枢に異常がある場合は検出が難しいことがあります。
検査にひっかかるとどうなる?
新生児聴覚スクリーニングの結果、「パス」が出ると「今回の検査では聞こえに問題がない」、「リファー」が出ると「今回の検査では聞こえに反応がなかったので再検査が必要、精密検査が必要」ということです。
つまり、リファーが出た場合、すぐに難聴だと分かるのではなく、あくまでその時の検査結果によるものです。
生まれつき難聴の赤ちゃんは1000人に1〜2人ですが、スクリーニング検査で「リファー」と結果が出る赤ちゃんは、自動聴性脳幹反応で1000人に約10人、耳音響放射で1000人に25〜90人程度います。
新生児聴覚スクリーニング検査で「リファー」となっても、聴覚には問題がない場合もあるので、心配し過ぎないようにしましょう。
【リファーが出たら2次再検査もしくは精密検査】
退院までに検査を行い、「リファー」が出た場合は再検査をすることが多いですが、その際検査でも「リファー」が出た場合は、2次再検査もしくは精密検査を受けます。
この場合はすぐに受けると同じ結果が出てしまうことがあるので、様子を見ながら、首が据わってくる生後3ヶ月頃に耳鼻科を受診し、検査をします。
低体重児や早産児は、小児科の先生と相談しながら受けましょう。
検査を受けるまでは、お家での様子を確認しておいてください。
問診のときに、その様子を伝えます。
検査では、機械で赤ちゃんに音を聞かせたときの、脳の反応を調べます。
泣いたり、動いたりすると、正しい検査結果が出ないことがあるので、赤ちゃんが眠った状態で検査をします。
時間は40分から1時間程度かかります。
この検査も赤ちゃんに痛みはありません。
問診と検査結果を総合し、医師の診断を待ちます。
結果が「パス」であれば、通院も必要ありません。
「リファー」が出た場合には、更に成長を待ってから検査をしたり、適切な支援にうつったりします。
まとめ
新生児の聴覚検査は産院で行われることが多いです。
健康保険は適用されない、自費診療ではありますが、赤ちゃんの聴覚に関する疾患の早期発見のために必要な検査です。
聞こえに問題がある場合、生後6ヶ月頃までに適切な支援を受ける準備ができるといいでしょう。
赤ちゃんの健やかな成長のために、もし大きな音に反応しないなど赤ちゃんの「聞こえ」に関して心配なことがあったら、かかりつけの医師に相談してみましょう。