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乳幼児揺さぶられ症候群とは
乳幼児をあやす時、パパやママが抱っこして揺らしたり「高い高い」をすることがよくあります。しかし、極端に激しい動きは思わぬ事故につながることがあります。
なかでも有名なのが「揺さぶられっこ症候群」。
正式名称は、「乳幼児揺さぶられ症候群」と言い、欧米では「Shaken Baby Syndrome(SBS)」と呼ばれています。
文字通り、乳幼児を激しく揺さぶることにより、様々な障害を引き起こしてしまうこと言います。
一体、どんな時に起こるのか?また、どんな症状があるのか?など、乳幼児揺さぶられ症候群について詳しくご紹介します。
乳幼児揺さぶられ症候群はなぜ起こる?
乳幼児揺さぶられ症候群は、生後0~6ヶ月くらいの首のすわっていない赤ちゃんに起こることが多いため、なるべくこの時期は頭部に衝撃を与えないような抱き方・あやし方にするようにしましょう。
乳幼児揺さぶられ症候群が起こる原因について考えていきたいと思います。
【考えられる原因】
首のすわっていない赤ちゃんの頭を、前後に激しく揺することで「揺さぶられ症候群」になると言われています。
これは、以下のような乳幼児ならではの身体的特徴が原因の1つではないかと考えられています。
・頸部が安定していないため(首の筋肉が弱いため、揺れの衝撃を受けやすい)
・頭が大きく重いため(首の弱さに対して頭が重いため、頭がぐらぐらして揺さぶりの衝撃を受けやすい)
・硬膜と脳との隙間が大きいため(乳幼児の脳は頭蓋骨の中に浮いているような状態で、揺さぶられることにより血管や神経が損傷する)
このように、首のすわっていない時期の赤ちゃんの場合、激しく揺さぶられることで衝撃を受けやすく、脳障害など大きな後遺症が残ったり、最悪の場合死に至るケースもあります。
ひと昔前までは、赤ちゃんをあやすための「揺さぶり」でも乳幼児揺さぶられ症候群になると考えられていましたが、現在では、激しく揺さぶる・激しい衝撃を与えないと起こらないと考えられていることから、親から子への虐待・暴力が原因であるという位置付けにもなってしまっています。(※1)
※1:厚生労働省HP『新たに検討する指標に関する資料 E-2乳幼児揺さぶられ症候群について』参照(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000033816.pdf)
揺さぶられっこ症候群の症状とは
誤って赤ちゃんを揺さぶってしまった…という場合は、以下のような症状がないかチェックしてみましょう。
【症状】
・元気がなく機嫌が悪くなる
・食欲がなく嘔吐する
・起こしてもまたすぐに眠る
・けいれん、意識障害、呼吸困難
主な症状としては上記のようなものがありますが、最悪の場合、死亡することもあるため注意が必要です。
たとえ死亡に至らなかったとしても、以下のような後遺症が残る可能性もあります。
・脳部分の出血(硬膜下血腫、クモ膜下出血など)
・失明、視力障害
・学習障害
・けいれん発作
・脳性まひ、知的障害
揺さぶられっこ症候群と虐待の関係
先述のとおり、揺さぶられっこ症候群の症状は大変深刻なものです。
そして悲しいことですが、半ば故意に揺さぶられる、つまり虐待によって発症してしまうことが社会的な問題になっています。
泣き止まない赤ちゃんに腹を立て、つい感情的になって激しく揺さぶってしまったり、なんとか泣き止ませようとして懸命にあやしているうちに揺さぶられ症候群になってしまったなど、決して他人事とは言い切れないかもしれませんね。
厚生労働省のHP内にある動画チャンネルで揺さぶられっこ症候群の予防と赤ちゃんが泣き止まない時の対処法の動画が紹介されています。
赤ちゃんの正しい泣き止ませ方を知ることで、誤って激しく揺さぶってしまったり、口を塞いでしまったりする事故を防ぐことができるかもしれません。(※2)
※2:厚生労働省HP「赤ちゃんが泣き止まない」(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/nakiyamanai.html)参照
揺さぶられっこ症候群を予防するために
これまでご紹介したとおり、首のすわっていない赤ちゃんを激しく揺する行為は大変危険であることがお分かりいただけたかと思います。
たとえ故意でなかったとしても、揺さぶられ症候群を起こさないために、以下の点に注意しお世話をするようにしましょう。
【ゆっくりした動きで】
赤ちゃんを抱っこして揺らすのが不安になってきたママもいるかもしれませんが、ごく普通にあやすことに気を付けておけば心配はありません。
両腕で赤ちゃんの頭と腰をしっかり支え、ゆっくり揺らすようにしましょう。
お尻や背中をトントンするときも軽いタッチで行います。
授乳後にゲップさせる場合も、首の後ろに手を添えた状態で背中を強く叩き過ぎないようにしましょう。
また、「高い高い」の遊びは、腰と首がしっかりすわってから行うようにします。
バウンサーを使う場合も、揺れの速度に注意し20分以上継続はしないようにしましょう。
【頭を固定する工夫を】
月齢の低い赤ちゃんの場合、車用のチャイルドシートの余裕がありすぎて、車の振動が伝わりやすいことがあります。
頭の周りの隙間ををクッションなどで埋めて赤ちゃんの頭が動かないように工夫しましょう。専用の商品も市販されています。
なければタオルやクッションで代用できますが、顔に掛かったりしないよう注意してください。
また、長時間ドライブする場合はこまめに休息を取り、いったんチャイルドシートから降ろしてあげましょう。
どうしても赤ちゃんが泣き止まないときは?
いろいろ試してみたけれど、それでも赤ちゃんが泣き止まないときもありますよね。
たとえ赤ちゃんが泣き止まなくても問題はありませんが、泣き止まないことにママがイライラしてしまいそうなときは下記のことを試してみてください。
・赤ちゃんを安全な場所に寝かせて、その場を離れる
・少しママの気持ちが落ち着いたら、戻って赤ちゃんの様子を確認する
これは一時的にママの気持ちをリラックスさせるためのものです。
長時間放置することのないようにしましょう。
もし、発熱や嘔吐などの症状が出ていたり、心配な場合は、医師に相談するようにしましょう。
まとめ
乳幼児揺さぶられ症候群は、普通にあやす程度の揺さぶりでは起こりにくいとされていますが、ついうっかりイライラして激しく揺すってしまった…ということは誰にでもあると思います。
揺さぶられ症候群についての正しい知識を家族みんなで共有し、赤ちゃんを少しでも危険から遠ざけるようにしましょう。