赤ちゃんと黄疸
程度の差はありますが、赤ちゃんには多かれ少なかれ新生児黄疸が見られます。そのほとんどが生理現象と考えられ、特に心配する必要のないものです。
しかし、中には治療が遅れると危険な病的黄疸もみられます。医療機関と連携し、早期治療が必要な疾患を見逃さないことが大切です。
生理的黄疸
赤ちゃんが胎外の環境に慣れていく過程で起こる一時的な黄疸を、生理的黄疸といいます。
黄疸は、ビリルビン(赤血球の中のヘモグロビンが変化してできた物質)が血液中に増えるために起こります。 お母さんのお腹の中にいるとき、赤ちゃんの血液は酸素が少なくても大丈夫な状態です。
けれども生まれた後は酸素がたくさんあるので、血液の状態を変化させなければいけません。胎児のときの血液から、空気中で生きていく血液に変化するときに、赤血球が壊れます。
この壊れた赤血球がビリルビンをというものを作り、黄疸を起こします。
このように赤ちゃんの黄疸は環境変化に伴い起こるものであり、赤ちゃんの黄疸の8割以上は生理的黄疸で、特に治療の必要はありません。
生後2~3日後から赤ちゃんの皮膚や白目が黄色くなり、5~7日ころにピークに達した後は次第に薄くなり、およそ2週間くらいで消えていきます。
ただし、黄疸が強い場合は治療が必要になる場合があります。
血液型不適合による黄疸
血液型不適合による黄疸にはRh式とABO型があり、いずれも出生後24時間以内に黄疸が現れます。したがって出産後入院期間中にわかることがほとんどです。
【Rh式血液型不適合】
ママの血液型がRh(-)で、赤ちゃんがRh(+)の場合に起きる可能性があります。
第一子の妊娠中(流産・中絶も含む)や分娩時に、赤ちゃんの血液がママの血液に入って抗体をつくると、第二子以降の妊娠中に、この抗体が胎盤を通って赤ちゃんの血液に入り、赤血球を壊して貧血や黄疸を引き起こします。
出生直後、強い黄疸症状が出ますが、お腹の中ですでに貧血による心不全や重症の場合は胎児水腫を起こしていることもあります。
ママの血液型がRh(-)の場合は、定期的に抗体を定量にするなど妊娠早期から細心の注意が必要ですが、産科の医師が必ずその点を確認しています。 治療が適正に行われれば予後は良いものです。
【ABO型血液型不適合】
O型のママとA型、B型またはAB型の赤ちゃんという組み合わせで現れることがあります。
何らかの原因により赤ちゃんの血液がママの血液に流れ込んで抗体ができることで起こりますが、流れ込む血液の量は非常に少ないので、貧血や黄疸の程度はRh不適合と比較すると軽度であり、胎児水腫になることも少なく症状が重症化することはまれです。
母乳性黄疸
新生児黄疸が3~4週間たっても消えない場合を遷延性黄疸といいますが、たいていは母乳を飲んでいる赤ちゃんにみられる母乳性黄疸です。
母乳性黄疸は良性の黄疸なので、赤ちゃんの発育や発達に問題がなく黄疸以外に異常がなければ、母乳をやめたり治療をする必要はありません。
しかし、黄疸の程度を示すビリルビンという値が高値の場合は光線療法を行うこともあります。
また、黄疸のある赤ちゃんが、元気がない、一日中ウトウトしている、哺乳力が低下している、うんちが白っぽいなどの症状がある場合は、他の病気の疑いもあるので医師の診察を受けましょう。
肝臓・胆道の異常による黄疸
黄疸がどんどん強くなる、便の色が白っぽくなるなどの症状がある場合は新生児肝炎や胆道閉鎖症のおそれがあります。 便の色が気になった場合はすぐに小児科医の診察を受けましょう。
黄疸の治療
治療法には主に光線療法と交換輸血の方法がありますが、重症例の黄疸でない限り、交換輸血は行いません。
【光線療法】
光線療法はとても有効な治療法で、治療を必要とするほとんどの黄疸で実施されています。
一般には副作用の少ないブルーライトかグリーンライトが使用されます。 副作用として、体温の上昇、発疹、下痢などの症状が現れたりすることもありますが、治療が終われば消えていく症状です。
最近ではポータブル型の光線器械も開発され、自宅での治療も可能となりました。
【交換輸血】
ビリルビン脳症の危険が高い場合や、重症の血液型不適合の場合などに行われます。